最高裁が遺産分割に関する判例を見直しました。不動産の相続にも影響がありそうです。

最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は19日、裁判所での審判で相続の取り分を決める「遺産分割」の対象に預貯金は含まないとしてきた判例を変更した。遺族間で争われた審判の決定で、「預貯金は遺産分割の対象に含む」とする初判断を示した。相続の話し合いや家庭裁判所での調停では預貯金を含めて配分を決めるケースが多く、こうした実態に沿う形に見直した。

裁判官15人の全員一致の結論。過去の判例は、預貯金は不動産や株式など他の財産とは関係なく、法定相続の割合に応じて相続人に振り分けるとしてきた。最近では2004年の最高裁判決が「預貯金は法定相続分に応じて当然に分割される」としている。

今回、大法廷は決定理由で「遺産分割は相続人同士の実質的な公平を図るものであり、できる限り幅広い財産を対象とするのが望ましい」と指摘。「預貯金は遺産分割の対象とするのが相当だ」と結論づけた。

(2016年12月20日日本経済新聞朝刊3面抜粋)

遺産相続が発生した場合、遺言があるならそれに従います。遺言がない場合は、まずは相続人となる配偶者や子供らが財産の分け方を話し合います。当事者が合意すれば、民法が定める法定相続分と異なる分け方も可能です。もし、合意がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割の調停や審判を申し立てることができます。(『相続税がかかる?不動産の相続についてわかりやすく説明する』参照)

この新たな判例に従うと、「兄は不動産、弟は預金全額」といった柔軟な分配がしやすくなります。判例変更により分割はしやすくなるとみられますが、金融機関から必要な現金をすぐに引き出せなくなるかもしれません。

今回の判例変更で影響がありそうなのが、死亡直後に遺族が故人の預金を引き出すケース。現在、引出しに応じるかどうかは金融機関や支店によって分かれる。

ある大手銀行は「相続人全員の合意がない限り、引き出しには応じない」と説明。当事者同士のトラブルに発展するのを避けるためだが、預金を引き出したい遺族から訴えられることもある。

別の銀行担当者は「葬儀代などの資金需要に応えるため、原則は引き出しに応じる」。家族が当面の生活費を求めて引き出しを希望することもあるという。これまでの判例に従えば、遺産分割をしなくても自分の法定相続分を引き出すことは可能だった

判例の見直しで個別の引き出しは難しくなる。遺族同士の話し合いや調停で家裁の審判が長引けば預金を引き出せない状態が続く可能性が高い

大谷剛彦裁判官ら5人の共同補足意見は、解決策の一つとして審判よりも簡易な手続きで銀行への仮払いを申し立てる「保全処分」の活用を挙げ、「家裁の実務で適切な運用に向けた検討が望まれる」と強調した。

相続に詳しい平田厚・明治大教授(家族法)は「相続人同士の公平を重視して実務に合わせる形での判例変更であり、多くの当事者は納得できるはず。預金を引き出せなくて困る人については、新たな法整備や家族の運用で対応していくべきだ」と指摘する。

(2016年12月20日日本経済新聞朝刊42面抜粋)

相続のときにもめることは少なくありません。遺族(相続人)の内、1人でもお金に窮する人がいれば特にです。一刻も早く現金を手に入れたいと願っているからです。

先ほどのように「兄は不動産、弟は預金全額」とした場合(弟がお金に困っている)、不動産はすぐに現金化できない要素もあるため、相続評価で分けたとすると、得をするのは兄ですよね。不動産は相続税の圧縮効果があり、居住用の場合、土地で時価の8割程度、建物で時価の5〜6割程度の評価になるからです。金額に換算すると1.5倍ぐらいかわるかもしれませんよね。

ただ、「今のところこうなります!」とも言い切れないので、どうなるのかについては今後の法整備も含めて、推移を見守る必要がありそうです。