地価が上昇していると最近よく聞きますが、今後も上昇し続けるのでしょうか。マンション購入は今のタイミングですべきなのでしょうか。それとも売却のタイミングなのでしょうか。

日本の地価が上昇しているそうですね。

「土地の値段を示す地価には国土交通省が年1回発表する公示地価など様々な種類があります。このうち国税庁が相続税などの税額を決める基準として毎年7月に公表しているのが『路線価』です。2016年度分の路線価(1月1日時点)は全国平均で前年比0.2%上がり、8年ぶりの上昇になりました。」

「日本ではかつて、地価が上がり続けるという『土地神話』が信じられていた時代もありましたが、1990年代初めにバブル経済が崩壊し、1990年代初めにバブル経済が崩壊し、地価はその後15年にわたって下落が続きました。世界的に低金利で地価が高騰した07年にいったん上昇に転じたものの、09年以降は再び下落し、東京都心の商業地の地価はピーク時に比べて半値以下になっています。」

(2016年8月22日日本経済新聞夕刊2面抜粋、以下同じ)

大阪も上昇していますが、特に大阪市の中心部が上昇しています。
(→『路線価、大阪ではマンション都心回帰…児童数急増、教室不足へ』)

 

なぜ、8年ぶりに上昇に転じたのですか?

「東京の都心など大都市部で住宅地や商業地の地価が上昇したためです。上昇は都市周辺にも広がって平均を取ると上昇しましたが、都道府県別に見るとなお33県で下落が続いています。」

「2020年の東京五輪開催が決まり、大規模な都市開発が進むという見方から、地価の先高観が広がりました。海外のヘッジファンドや中国人の富裕層も日本の不動産に投資しています。郊外に一戸建を買っていた高齢者が生活に便利な都心のマンションに住み替える動きも広がっています。金利低下で住宅ローンも借りやすくなっています。」

「もう一つ、中国人を中心に訪日外国人観光客が大幅に増えたことも影響したようです。訪日外国人需要を当て込んで、ホテルや商業施設の新規オープンも相次ぎ、大都市部の商業地の地価が上昇しています。。」

上昇した要因を簡単にまとめると以下の5点になります。

  1. アベノミクスによるインフレ期待
  2. アベノミクスによる円安(海外投資家から見ると割安になる。)
  3. 訪日外国人観光客の増大(円安により観光客が増え、ホテルや商業施設だけでなく民泊用に投資用物件の購入も増えた。)
  4. 2020年東京オリンピック開催決定
  5. 少子高齢化により郊外の一戸建てから都心のマンションへの回帰

 

今後も地価上昇は続きますか?

「地価は様々な要因で変動します。地価を下支えするとみられるのは金利動向です。住宅ローン金利はすでにかなりの低水準に下がっており、これ以上下がる余地は小さそうですが、一方で上がる可能性も低いと考えられます。超長期国債が低い水準で推移していることは、金融市場の参加者が今後20~30年は低金利が続くと予想していることを表しています。」

「地価を押し上げる経済力の衰えも気になります。日本経済は潜在成長率が極めて低くなっていて、低成長が続く可能性が高そうです。そうした状況で商業地のオフィス需要が今後も増え続けるとは期待しにくいでしょう。東京五輪が終わればホテルの稼働率も下がると考えるのが自然です。」

「家計所得が低迷しているのに加え、かつてのように長く勤務すれば賃金が上がる状況でもなくなりつつあり、住宅購入を見送る動きも広がっています。今後の地価に大きく影響しそうなのが日本の人口動態です。労働力人口は減少が続いています。単身者世帯の増加によって増えていた世帯数も近い将来、減少に転じる見通しで、住宅需要は確実に減ります。すでに日本全体でみると空き家の数も多く、今後も増えるでしょうから、住宅地の地価は中期的には下がる可能性が高いと考えられます。」

上記の「超長期国債が低い水準で推移していることは、金融市場の参加者が今後20~30年は低金利が続くと予想していることを表しています。」について、金利の考え方としてはその通りなのですが、今は日本銀行が異次元の金融緩和を行っているため低い金利の水準で抑えられているので、決して市場参加者が文字通り20〜30年間、低金利が続くと考えているとは限りません。いきなり予期せぬ形で金利が大幅に上昇する可能性もあり、そうなると今の状態はババ抜きの状態に近く、誰かが最後のババを引かざる得ない状態になる可能性があると言えます。

また、ニューヨークやロンドンの不動産と決定的に違うのは、ニューヨークやロンドンは人口が増大し続けており、住宅需要が強い状況にあります。それに対して日本は少子高齢化のため、これ以上家(土地)が必要ないわけです。現に人口が増加している東京は上昇が続くでしょうが、日本の大半の都市は人口減が続いているため、住宅需要がない=地価が上昇する理由がないということになります。

 

マンションなど住宅の買い時を判断するのは難しそうですね。

「今年になって首都圏の新築マンションの契約率が好不調の目安とされている70%を割る月が増えています。昨年発覚したマンションのくい打ちデータ偽装問題の影響との見方もあり、気になるところです。タワーマンションの高層階の相続税評価額が相対的に割安なことを利用した節税策にも、国税庁が歯止めをかけようとしており、これまでのような値上がりは続かないかもしれません。すでに大都市部のマンション価格はかなり高騰していて、若い世代が購入するのは難しくなっています。」

「ただし値下がりするところもあれば、今後も値上がりするところはある、ということになりそうです。高齢者の都心回帰は今後も続くでしょう。駅や病院から近いなど利便性が高い物件ならば、買った後で大きく値下がりするリスクは低いかもしれません。」

上述した地価が上昇した要因をもう一度おさらいしましょう。

  1. アベノミクスによるインフレ期待
  2. アベノミクスによる円安(海外投資家から見ると割安になる。)
  3. 訪日外国人観光客の増大(円安により観光客が増え、ホテルや商業施設だけでなく民泊用に投資用物件の購入も増えた。)
  4. 2020年東京オリンピック開催決定
  5. 少子高齢化により郊外の一戸建てから都心のマンションへの回帰

上記のうち、①〜③はすでに剥げ落ちつつあります。実際に相場の方向は円安ではなく円高に変わっており、実際に円高になったことにより、訪日外国人の消費はガクッと下がりました。特に家電や宝飾品など金額が高い品目で落ち込みが激しく、最も金額が大きい不動産の落ち込みが激しいことは言うまでもありません。また、円安による輸出企業の利益増大が賃金上昇をもたらしてきました。消費活動も旺盛になり不動産購入につながっていましたが、残念ながら賃金上昇も止まりつつあります。

④の東京オリンピック開催でまだ約2年ぐらいの間は東京は大丈夫でしょう。しかし、他の都市にとってはほとんど関係がありません。

また、⑤の状況も変わりがありません。そもそも今から30年ぐらい前までは人口も増えている中、「都心=空気が悪く、環境も悪く、地価も高く住む場所ではない」ということで、郊外の山をきり開き、新築住宅をどんどん建てていました。現在は、その世代の方々の子供が独立したため、広い家を手放し、環境が良く利便性も伴った都心の駅チカのマンションに流入する流れが続いています。また、車を所有していない若い世代も多く、ますます駅チカのマンションに流入する構造となっています。

これらの要因を考えると、全体的に鑑みていつまでも地価が上昇するとは考えにくい状況です。むしろ、ここ数年上昇したことを考えると、手放そうと考えていた方にとっては願ってもない時期だとも言えます。マンション購入についても、今の時期が適切かと言われると、低金利が追い風とはいえ、総じて価格が高い状況のため、適切とは言えないでしょう。

しかし、住宅を購入するきっかけは景気が主な理由ではなく、なにかしらのライフイベントが生じて(子供が生まれるなど)購入するケースが多いため、そのような方にとっては「今」がそのタイミングであり、数年後まで待てるわけではありません。そのような方には、ぜひ新築や中古物件などを比較して、自分にとって本当に価値がある物件を選び抜いて購入することをおすすめします。